税の恩典があり、確実にもらえる 国民年金基金のメリット強調していきたい 国民年金基金連合会 松本省藏理事長に聞く(J-CASTニュース)

 年金の仕組みは複雑だ。「制度がよくわからない」という人、掛金よりも受け取る年金の方が少ないのでは、と不安に思う人、と様々だ。その上「上乗せ年金」となると、正確に理解している人はそうはいない。

 国民年金基金連合会の松本省藏理事長に「国民年金基金」のメリットと、今後国民にどう知ってもらうかについて聞いた。

■多種多様な職業の人が加入できる制度

――そもそも国民年金基金とはどのような仕組みなのでしょう。

  松 本 年金制度は「3階建て」になっているといわれます。まず、全国民が強制加入する「国民年金」があります。これが1階部分に当たります。老齢基礎年金といい、いわば必要最低限の年金です。サラリーマンなど給与所得者の場合は、この1階部分に2階建て部分をプラスした「厚生年金」に加入します。これも強制です。さらに企業が任意で設立する「厚生年金基金」が3階建ての部分としてあります。
   しかし、自営業者にはこの2階建て、3階建て部分の年金がありませんでした。自営業者と給与所得者とのアンバランスを解消して、自営業者に対しても上乗せ部分の年金を提供するのが「国民年金基金」で、1991年4月にスタートしました。任意加入です。老後のゆとりを確保する年金として、自営の商店主や開業医、弁護士や公認会計士、とび職や左官業などの建設業者、お稽古ごとの先生に作家や音楽家、フリーランスで活躍するライターやジャーナリスト、俳優・タレントなど、多種多様な職業の方が加入できる制度です。

――加入するために条件はありますか。

  松 本 国民年金基金は加入者が毎月掛金を積み立て、それを財源に将来の年金給付を賄う積立方式で運営しています。国民年金(基礎年金)の保険料をきちんと納めている自営業者(第1号被保険者)であることが条件です。国民年金への加入は20歳からですが、実は国民年金基金も20歳から加入できるのです。たとえば60歳まで40年間掛金を払えば、65歳から1階建て部分の国民年金(毎月約6万6000円)と2階建て部分の国民年金基金(3口加入の場合毎月4万円)を合わせた年金がもらえることになります。
   ただし、一旦加入すると脱退できません。税制上の恩典が大きいためです。ただ、掛金が払えなくなった場合は掛金を減らす、といった方法で調整できます。また年金受給の基本は終身ですから、65歳の受け取り開始から亡くなるまでもらえます。

■一番のメリットは税の優遇措置

――どんなメリットがあるのでしょうか。

  松 本 加入する時点で、老後にもらいたい年金額と、そのために毎月いくら掛けていけばいいのかがわかります。掛金は1口目を2コースから、2口目以降の7コースから選んで、それを組み合わせることも自由にできます。2009年4月からは60歳から受け取れるタイプのバリエーションを追加し、公的年金を受け取る65歳までの、「つなぎ年金」の役割も担っています。
   しかし、一番のメリットは税の優遇措置が充実していることです。国民年金基金の毎月の掛金は全額所得控除の対象になりますし、65歳から受け取る年金は公的年金控除の対象になります。万一亡くなられた際には遺族一時金が支給されますが、それも非課税扱いです。
   たとえば、課税所得金額400万円の人が月額2万3300円(年間約28万円)掛けた場合、税控除額は約8万4000円で、実質の負担額は約19万6000円に減ります。一般の個人年金保険だと、年間保険料が約28万円に対し、税控除額は1万3500円なので、約7万円も違うのです。

■長期的に見ると必要な収益を確保できる

――資産はどのように運用しているのですか。

  松 本 基金には地域型と職能型の計72基金があります。その資産は連合会が中心に運用しますが、一部の基金(16基金)でも行っています。2008年度末でみると、全体の資産残高は約2兆1708億円で、そのうち約1兆9067億円(88%)を連合会が、残りを個々の基金が運用していることになります。
   ただ、連合会が直接運用しているわけではなく、プロに任せています。現在は5つの信託銀行と17の投資顧問会社に委託し、連合会は「年金資産運用の基本方針」を策定し、それに沿って国内外の株式、国内外の債券と円ヘッジの債券の5種類の投資先を「基本ポートフォリオ」に基づいて配分します。運用委託先には成果とリスクを考え、バランスよく運用してもらっています。
   連合会は、全体のリスク管理と委託先の運用状況をしっかりチェックしていくのが役割で、四半期ごとに運用成績を検証し、委託先の成績が上がらなければ他社に変更することもあります。

――リーマン・ショックなどの影響で資産運用について心配される方がいます。

  松 本 サブプライム問題やリーマン・ショックによる世界的な金融危機の影響で、委託先の運用成績も悪化しました。連合会も同様にこの影響を受け、08年度の運用利回りはマイナス約20%となりました。しかし、09年度には大幅に持ち直してきています。
   年金財政の状況は、こうした市場の動向に大きな影響を受けるため、短期的には年度によって変化しますが、あくまでも長期運用を基本としています。その方針は揺るぎませんし、結果的に必要な収益を確保する最善の方法であると考えています。

――年金に対する不信感が出ているのは、「加入時の約束が確実に履行されるのか」という点です。大丈夫なのでしょうか。

  松 本 国民年金基金は給付される年金額を約束しています。確定給付型年金といいます。加入時に取り決めた金額が将来受け取れます。最近増えてきた、支払う保険料を決めて運用の成果によって受け取り金額が変わってくる確定拠出型年金とは違います。ここをぜひご理解いただきたいですね。

■「老後設計のアドバイス」提供が大事

――認知度を高め、加入者の獲得へ向けた取り組みについて教えてください。

  松 本 厚生年金は、年金にかかる手続きを企業がやってくれて、掛金を給与から天引きしているので、いわば自然に掛金が積み上がっていきます。自営業者やフリーランスの方は、その2階建て部分を自分でやらなければなりません。国民年金基金はいい制度なのですが、認知度が上がらなければ利用してもらえません。そこが悩みです。PR活動にも力を入れ始めました。基礎年金を運営する厚生労働省から第1号被保険者の情報を得て、年3回加入対象者にダイレクトメール(DM)を発送しています。DMは1年から1年半のあいだに、1度は手元に届くようになっています。
   現在放映中のテレビCMには長澤まさみさんを起用していますが、10年度からは貫地谷しほりさんに登場してもらいます。DMの送付や確定申告の時期などにあわせて、効果的にテレビやラジオ、新聞などで展開していきます。
   テレビCMやDMでPRして、電話や実際に訪問して勧誘することもあります。「老後設計のアドバイス」を提供していくことも大事ですね。たとえば年金がいくらもらえるか、掛金はいくらか、といった質問に応じながら、ちょっと聞いてみよう、資料を請求してみよう、という流れをつくりたい。そのためホームページなど、インターネットも活用する方針です。
   公的年金という性格上、厚生労働省や地元自治体と協力して推進していますが、地方銀行や信用金庫、信用組合など地域金融機関との連携も強化したいところです。とくに信用金庫などは商店などを経営する自営業者との取引が多いので、加入の呼びかけをお願いしたいし、郵便局なども活用して認知度を高めていきたいと思っています。


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